○障がいによる差別を解消し共生社会をめざす直方市条例
平成30年7月5日
条例第20号
目次
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 障がいのある人の権利の尊重(第8条―第10条)
第3章 障がいを理由とする差別に対する相談体制(第11条―第16条)
第4章 直方市障がい者差別解消調整委員会(第17条―第22条)
第5章 雑則(第23条・第24条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、障がいのある人が、障がいに対する誤解や偏見により不利益な取扱いを受け、配慮不足により日常生活の様々な場面で不自由を感じている状況にあることから、差別のない社会の実現を目指し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び市内事業者の役割を明らかにし、障がいのある人への差別の解消を推進することにより、障がいのある人もない人も全ての人が個人として尊重される共生社会を実現することを目的とする。
(1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)、難病(治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病をいう。)を原因とする障がいその他の心身の機能の障がいをいう。
(2) 障がいのある人 障がいのある人であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(3) 差別 あらゆる区別、排除及び制限であって、政治的、経済的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の人たちと等しく全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、若しくは行使することを害し、又は妨げる目的若しくは効果を有するもの(合理的配慮の否定を含む。)をいう。
(4) 社会的障壁 障がいのある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(5) 合理的な配慮の提供 障がいのある人が障がいのない人と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が過重な負担とならない程度で、障がいのある人の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁を除去するために必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいう。
(6) 市内事業者 個人であるか若しくは法人であるか、又は営利を目的としているかしていないかにかかわらず、市内で社会的地位に基づき反復継続して商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(以下「行政機関等」という。)を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 障がいのある人が受ける日常生活又は社会生活上の不自由は、障がいに原因があるのではなく、障がいを理由とする差別や障がいのある人に対する誤解、偏見その他の社会的障壁を除去するために必要かつ適切な措置をしなかった社会にこそ原因があることを認識し、社会の責任でこれらの社会的障壁を取り除き、障がいを理由とする差別をなくし、障がいのある人が障がいのない人と等しく自らの意思を決定し、自立した尊厳ある生活を営み、社会のあらゆる分野に自由に参加することができる社会の実現を希求することを基本理念とする。
(市の責務)
第4条 市は、前条の基本理念にのっとり、障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、差別の解消の推進に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
2 市は、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する施策を実施するにあたり、市民、市内事業者、国及び福岡県その他の地方公共団体と連携及び協力を図らなければならない。
(市内事業者の役割)
第5条 市内事業者は、障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、障がいのある人の立場を理解し、障がいを理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めるものとする。
2 市内事業者は、合理的な配慮の提供支援をはじめとする障がいを理由とする差別の解消の推進に関する取組の普及及び啓発を、市と協力して取り組むよう努めるものとする。
(市民の役割)
第6条 市民は、障がい及び障がいのある人に対する理解を深め、障がいの有無に関わらず、お互いの立場を理解し、障がいを理由とする差別の解消の推進に関する取組に協力しあうよう努めるものとする。
(市民等の理解の促進)
第7条 市は、障がい及び障がいのある人に対する理解を深め差別を解消することの重要性に関する市民の理解及び関心の増進が図られるよう、多様な媒体を用いた周知・啓発活動に積極的に取り組むものとする。
2 市長及び教育委員会は、児童及び生徒が障がい及び障がいのある人に対する理解を深めるための教育の重要性を認識し、その実施について相互に連携を図るものとする。
3 市は、障がいのある人に対する支援を適切に行うため、全ての職員及び指定管理者が障がい及び障がいのある人についての知識を習得し理解を深めるために必要な措置を講ずるものとする。
第2章 障がいのある人の権利の尊重
(不当な差別的取扱いの禁止)
第8条 何人も、障がいのある人に対し、不当な差別的取扱いを行ってはならない。
(市における社会的障壁の除去のための合理的な配慮の提供)
第9条 市は、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障がいのある人の家族、後見人その他の関係者が本人に代わって行ったものを含む。以下「意思の表明」という。)があった場合において、当該障がいのある人が障がいのない人と同等に権利を行使することができるようにするため、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮の提供をするものとする。障がいのある人の意思の表明がない場合であっても、当該障がいのある人が現に社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときは同様とする。
(事業所における社会的障壁の除去のための合理的な配慮の提供)
第10条 市内事業者は、障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、当該障がいのある人が障がいのない人と同等に権利を行使することができるようにするため、社会的障壁の除去の実施について合理的な配慮の提供をするよう努めるものとする。障がいのある人の意思の表明がない場合であっても、当該障がいのある人が現に社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときは同様とする。
第3章 障がいを理由とする差別に対する相談体制
2 市又は市が委託する相談機関は、個別相談があったときは、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 個別相談に応じ、関係者への事実の確認及び調査を行うこと。
(2) 個別相談に応じ、関係者に必要な助言及び情報提供を行うこと。
(3) 個別相談に係る関係者間の調整を行うこと。
(4) 関係行政機関への紹介を行うこと。
(助言又はあっせんの求め)
第12条 差別を受けた障がいのある人又はその家族、後見人その他の関係者は、個別相談を経ても不当な差別的取扱い等に関する事案(ただし、市内事業者、市又は市内で事業を行う行政機関等を相手方とする事案に限る。以下「対象事案」という。)が解決しないときは、市長に対し、その解決のための助言又はあっせんを行うよう申立てをすることができる。ただし、家族、後見人その他の関係者による求めが障がいのある人の意に反すると明らかに認められるときは、この限りでない。
(1) 過去に同一の事案の申立てを行ったことがあるとき。
(2) 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(その期間に申立てができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。
(直方市障がい者差別解消調整委員会への諮問)
第13条 市長は、前条の規定による助言又はあっせんの申立てがあった場合には、直方市障がい者差別解消調整委員会(以下この章において「調整委員会」という。)に対し、助言又はあっせんを行うことの適否について諮問するものとする。
2 調整委員会は、前項の助言又はあっせんを行うことの適否を判断するために必要があると認めるときは、当該対象事案の関係者に対し、その出席を求めて意見を聴くことができる。
(助言又はあっせん)
第14条 市長は、調整委員会から諮問に対する答申を受け、助言又はあっせんを行うことが適当であると認めた場合は、当該対象事案の関係者に対し、助言又はあっせんを行うものとする。
(勧告)
第15条 市長は、前条の助言又はあっせんを行った場合において、不当な差別的取扱い等をしたと認められる対象事案関係者が正当な理由がなく当該助言又はあっせんに従わないときは、当該対象事案関係者に対し、当該助言又はあっせんに従うよう勧告することができる。
(公表)
第16条 市長は、前条の規定により勧告を受けた対象事案関係者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、当該対象事案関係者の名称及び当該勧告の内容を公表することができる。
2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る対象事案関係者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、意見を述べる機会を与えなければならない。
第4章 直方市障がい者差別解消調整委員会
(調整委員会の設置)
第17条 対象事案に対して助言又はあっせんを行うことの適否について審議するため、直方市障がい者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
2 調整委員会が所掌する事務は、次に掲げるとおりとする。
(1) 市長の諮問に応じ、対象事案に係る事項を調査すること。
(2) 調査結果に基づき、市長に対して助言又はあっせんの必要性について答申すること。
(調整委員会の組織)
第18条 調整委員会は、委員5人以内で組織する。
2 調整委員会の委員(以下「委員」という。)は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する。
(1) 学識経験者
(2) 障がいのある人
(3) 障がいのある人を主に監護している者
(4) 障がいのある人の福祉に関する事業に従事する者
(5) 障がいのある人の権利の擁護に関し優れた識見を有する者
3 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠により就任した委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任することができる。
(委員長)
第19条 調整委員会に委員長を置き、委員の互選によって定める。
2 委員長は、会務を総理し、調整委員会を代表する。
3 委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、委員長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。
(会議)
第20条 調整委員会の会議は、委員長が招集する。ただし、委員を委嘱後最初に開かれる会議並びに委員長及び前条第3項の委員がともに欠けたときの会議は、市長が招集する。
2 会議の議長は、委員長をもって充てる。
(関係者からの意見の聴取)
第21条 調整委員会は、特に必要があると認めるときは、委員以外の関係者に対し、会議に出席することを求め、その意見を聴くことができる。
(秘密の保持)
第22条 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
第5章 雑則
(感謝状の贈呈)
第23条 市長は、障がいを理由とする差別の解消の推進について功績があると認められ、市の公益及び自治の振興に尽力した個人又は団体に感謝状を贈呈することができる。
(その他)
第24条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成30年7月1日から施行する。
(検討)
2 市は、この条例の施行後3年を経過した場合において、この条例及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)の施行の状況、社会情勢の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。